名古屋市鶴舞線いりなか駅近くの女性医師による精神科・心療内科|りさ杁中こころのクリニック

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2022/04/07 : 思春期の患者さんに対して家族は助言しない方が良い?最近の精神療法の傾向

拒食症や不登校などでお困りの高校生の患者さんのことで精神科・心療内科に受診した際、医師から「助言はしない方が良い」(「”食べなさい””学校に行きなさい”と言わない方がいい」など)と指導された親御さんも多いのではないでしょうか。今回は、症状に対して家族がどのように対応すると良いのか、最近の傾向をご紹介します。


精神科医がどのような精神療法を行うかは、疾患や困りごとの種類によって変わります。そのため、親御さんに求められる対応も、精神療法によって変わってきます。

思春期の患者さんに対する精神療法の大まかな方向性については、下の3つのように分けられます。

1)「家族は助言をせずに見守ってください」と指示する
拒食や不登校があると、「食べなさい」「学校に行きなさい」とつい口うるさく言ってしまうことも多いものですが、そうすると家族関係が悪化してしまい、その結果精神症状も悪化するなど、悪循環に陥ることがあります。
家族が助言をせずに見守ることで、そういった悪循環を生じにくくさせることができ、その分、学校や家庭の問題などに取り組む余裕が生まれたりします。どちらかというと、「悪循環さえなくなれば、自然に良くなるかもしれない」という、自然治癒力に任せた方法かもしれません。調べた範囲では、1970年頃から取られていた方法のようです。


2) 認知行動療法
対人緊張やパニック発作が怖いために学校に行かない場合、症状に対応するためのスキルを学んだり、少しずつ不安に慣れたりする必要があり、そういった場合には認知行動療法という手法が取られることが多いです。認知行動療法自体は、家族療法ではなく本人主体の治療ですが、ご家族は患者さんが認知行動療法の課題に取り組めるようにサポートする役割になるかと思います。


ここまでは従来、よく用いられていた手法でした。そして最近では
3)症状があってもうまく生活できるように家族が助ける
という方法が取られることがあります。
神経性やせ症に対する家族療法であるFamily Based Treatment(FBT)では、摂食障害の症状で食事を減らしてしまう患者さんに代わって家族が食事を管理するようにしますし、IPT-A(思春期の患者さんに対する修正版対人関係療法)では、うつ病の症状があっても子どもが学業を続けられるよう、家族がサポートしたりします。

「それでは、1)で心配していたように、喧嘩になってしまうのではないか」と思われるかもしれませんが、そうならないよう、両者の精神療法では「症状は本人のせいではなく、疾患によるものである」ということをご家族に十分に理解してもらいます。

また、ご家族がどのような伝え方をすると良いのか治療の中で相談したりすることで、喧嘩にならず適切にサポートできるよう、援助していくようなものになります。

IPT-AとFBTが初めて報告されたのは1990年前後で、無作為化比較試験は2004年、2010年に行われていることから、どちらも1)2)と比べると新しい治療法になります。


繰り返しになりますが、この3つの方法は、患者さんの病態に合わせて使い分ける必要があります。自然治癒力だけでは治らない病態を1)で押し通そうとしても改善が少ないことが予想されますし、不安症の方に3)の方法で行ってもうまくいく可能性は少ないかと思われます(実際、IPT-Aは不安症を併存する場合、効果が乏しいと報告されています)。




りさ杁中こころのクリニック 院長
今井理紗

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